少し前にクロードレヴィ=ストロースの『構造人類学』と『野生の思考』を読んだ際、「アートというのもひとつのトーテミズムなのかもしれない」と感じました。

 この本の中で語られているように、メラネシアや北米の先住民達が自分をも含む自然・神話や文化からトーテム表象を引き出しているのなら、近代において自然や神話を切り離してきた文明は文化からそれを取り出しているのかもしれません。

 トーテミズムによってひとつの制度的な権威が構築されることは、それを構成する民族にとって利点をもたらす反面、それ以外のものは見えづらくなってしまいます。ですが、制度があるということはそれ以外のものが存在する証明の一つになっているように思うし、それらは確かに私たちのそばに存在しています。

 何を「許」とし何を「否」とするのか。もし、その時々で決められた基準が特定の人や制度以外のものを省いているのなら、そこに目を向けることは社会の中にいる私たちにとって、そこからはみだした自分の断片をも含めて自らを知ることにつながるように思います。

 私の作品は境界をテーマにしたもので、淡く、もろく、おぼろげです。

 少しでも認識のゆらぎを感じとってもらえるのなら幸いです。

(トーテミズム:「トーテミズム、もしくはそう呼ばれている現象は、単なる言語の枠を超えている。それは記号の間に両立と非両立の規則を立てることに満足せず、ある行動を命じある行動を禁じて、一つの倫理を設定するように見える。」『野生の思考』大橋保夫訳、みすず書房、115頁。)

北直人

1983 生まれ

2015 朝日新聞厚生文化事業団 Next Art展推薦作品選出

2016 イーゼル画会展 藤屋画廊(以降、2019年まで毎年参加)

2018 個展『Descry』市民ギャラリー矢田

2019 みのかもannual2019 みのかも文化の森

カテゴリー: 展示会